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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)11717号 判決

原告

飯田吉昭

原告

藍川行男

右両名訴訟代理人

石井恒

被告

日本金属加工株式会社

右訴訟代理人

堂野尚志

土方邦男

主文

一  被告は、原告飯田吉昭に対し金一七〇万円、原告藍川行男に対し金一六〇万円、及び右各金員に対する昭和五四年八月二四日から支払ずみまでそれぞれ年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その二を原告らの、その一を被告の各負担とする。

四  この判決は、原告ら勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告飯田吉昭に対し、金一六二〇万円、原告藍川行男に対し、金九一〇万円、及びこれらに対する昭和五四年八月二四日から支払ずみまでそれぞれ年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求の原因

1  原告らは、いずれも、昭和三九年四月一日頃、被告の取締役に就任し、被告の主たる業務である金属加工の技術の開発、従業員の指導、時計バンド材料、眼鏡材料、その他工業材料の製造に携わつてきたものであるが、その在任中に、次の(1)ないし(4)の職務に属する発明(以下、(1)の発明を「金張発明」、(2)の発明を「線素材発明」、(3)の発明を「クラッド板発明」、(4)の発明を「連続クラッド発明」という。)をした。

(1) 発明の名称 ステンレス金張製造法

発明の時期 昭和四〇年一〇月

発明の内容 別紙(一)のとおり

発明者 原告両名

(2) 発明の名称 複合金属線素材の製造法

発明の時期 昭和四二年夏

発明の内容 別紙(二)のとおり

発明者 原告飯田、石川好一、鍵本正

(3) 発明の名称 異質クラッド板の製造法

発明の時期 昭和四四年末

発明の内容 別紙(三)のとおり

発明者 原告両名、石川好一、青木義雄

(4) 発明の名称 連続クラッド装置

発明の時期 昭和四八年一月

発明の内容 別紙(四)のとおり

発明者 原告両名、青木義雄、石川好一、松永尚利

2  線素材発明及びクラッド板発明が発明の実質を備えていたことは、後にこれらが特許されたことにより明らかであるが、金張発明及び連続クラッド発明も次のとおり、それぞれ発明の実質を備えていた。

(一) 金張発明について

(1) 戦後、金張材料業界で指導的立場にあつたのは株式会社山本金属研究所の山本勇三社長であつたが、その製作する金張材料は、主として各種銅合金と金合金を複合したものであつて、高価な材料を使用するにもかかわらず、その銅合金が腐触変色する欠陥を避けえなかつた。このため、業界からは、腐色のないステンレス鋼と金合金との複合材料の作成が希望されていた。

(2) 原告両名は、このような材料が作成できない理由を調査し、障害となる次のような数点の条件を発見した。

① ステンレス鋼は総じて焼鈍温度が摂氏一一〇〇度であり、この温度ではほとんどすべての金合金が溶けて流れる。

② ステンレス鋼は、表面が極めて緻密で透明なクロム酸化物の被膜に覆われているため、在来の金張製作方法だけでは、被膜が支障となつて複合ができない。

③ ステンレス鋼を酸化させないために、非酸化性の各種熱処理炉が不可欠である。

④ ステンレス鋼の鋼種は比較的耐触性のよいオーステナイト系のもので、かつ、加工し易いものを選ばねばならない。フェライト系のものだと、加工し易く金張には楽であるが腐触し易い欠点がある。

(3) これらの点から、ステンレス金張を行うには、「金合金の融点以下の熱処理を行つてもその耐触性を劣化しないステンレス鋼の組成を決定し、ステンレス鋼の表面被膜を除去した後、金合金と複合せしめ、金属再結晶の理論を活用して熱処理温度と圧延率の適正条件を定めることが必須であり、熱処理温度はすべて金合金の融点以下に制御しなければならず、またこの金合金の融点以下の熱処理でも、当該ステンレス鋼の耐触性が劣化しないものでなければならない」という技術的条件を満たす必要があつた。

(4) 金張発明は、以上の各条件を原告両名が克服充足して完成させたものであり、完成時の昭和四〇年一〇月頃には、現実に被告において実施が開始されたものであり、特許を受けることができる技術内容を有していた。

(5) このことは、株式会社山本金属研究所が被告に追随しようとして生産技法を誤まり倒産したこと、同社を吸収合併した株式会社徳力金属研究所(後に株式会社徳力本店と商号変更)が、昭和四一年三月一一日特願昭四一―一四六四二号をもつて金合金とステンレス鋼との張合わせ板金の製造法について特許出願し、特公昭四五―四六一一号をもつて出願公告されたが、被告が、既に金張発明を使用して略同一の製品を製造、販売していたので、右特許出願はその内容の九〇パーセントは右製品と同一であり、右出願に係る製造法は公知のものであるとして異議の申立てをし争つたところ、同社は右出願を放棄するに至つたことからも明らかである。

(二) 連続クラッド発明について

原告らが連続クラッド発明を完成する以前は、長尺の複合材料の製造方法は静的に金属を張りつけ圧延する方法しかなく、これにより得られる長さは約一〇メートル程度にすぎなかつた。業界では更に長尺物の生産が期待されていたため、原告らは、黒鉛板の摺動特性が非酸化性雰囲気の中では劣化しない点に着眼し、材料の異質金属条を傷がつかない程度に黒鉛板に密着させ、加熱して熱を吸収させながら黒鉛板間を通過させる技術を開発して、四〇ないし五〇メートルにも達する長尺のクラッド板の製作に成功した。この連続クラッド発明は、オートメーション化もできる利用価値の大なるものであり、製品の市場価値も高かつたものである。

3(一)  各発明者の各発明に係る権利の共有持分は、発明者の技量、当該発明に関する着想・発案、提供した技術、労力等、各発明者が当該発明に寄与した程度によつて決定すべきものである。

(二)  各発明者の経歴、関係は、以下のとおりである。

(1) 原告飯田

原告飯田は、昭和二〇年、東京府立化学工業学校化学機械科を卒業し、次いで昭和二六年、千葉工業大学治金科を首席で卒業した。同年、株式会社科学研究所(昭和三三年特殊法人理化学研究所に改組)に入所し、昭和三一年一一月からは、被告の技術顧問を兼務した。昭和三九年四月、被告常務取締役に就任の際に、理化学研究所嘱託となつた。昭和五〇年四月、被告専務取締役となつた後、昭和五四年四月、退任し、同年五月、林精器製造株式会社顧問となり、同年七月、株式会社アイ・ビーを創立して、金張技術の向上開発に努めている。

(2) 原告藍川

原告藍川は、昭和二〇年、東京府立化学工業学校化学機械科を卒業し、昭和二三年、株式会社山本金属研究所に入社し、貴金属加工の業務に携わつた。昭和三一年、被告の設立に当たり、工場長として入社し、貴金属加工技術の向上に努め、昭和三九年四月、被告取締役製造部長、昭和五二年、常務取締役製造部長となつた後、昭和五四年一月、退任した。

(3) 青木義雄

青木義雄は、小学校から大学に至るまで、原告飯田の三年後輩に当たる。同人は、大学卒業後、鋳鋼部門を専門としてきたが、所属会社が倒産したので、昭和四〇年、原告飯田の紹介で被告に入社した。同人は、技術者としての基本的な素養はあつたので、入社後直ちに研究室勤務となつた。しかしながら、鋳鋼と被告の扱う貴金属とでは、取扱い方が全く異なるので、数年間は研究室を主宰するには至らず、すべて原告飯田の指導を受けながら研究活動を行い、後に研究室長となつた。

(4) 石川好一

石川好一は、原告両名の工業高等学校の一二年後輩(定時制)であり、同校卒業後は、原告藍川のいた株式会社山本金属研究所に勤務し、原告藍川が被告に移るとともに被告に入社したもので、右各社を通じて原告藍川から特に貴金属の加工技術面について指導育成を受けた。同人は、金属学等の理論的素養は未熟で、専ら現場技術面の改良に携わつてきたもので、昭和四〇年、被告の研究室員となつてからは、主として原告飯田の指導を受けてきたものである。

(5) 松永尚利

松永尚利は、原告飯田の大学の一六年後輩であり、専攻は電子工学である。被告の将来に具えて、原告飯田が採用入社させたもので、弱電回路系統ではかなり役に立つた。

(6) 鍵本正

鍵本正は、昭和三〇年、広島工業高等学校を卒業し、昭和三二年頃、被告に入社した中堅機械技術者である。特に得意とする分野はないが、原告藍川の助手的存在として、生産管理業務を補佐してきたものである。

(7) 以上のとおり、原告両名を除くその余の発明者らは、いずれも、原告らの指導の下に研究活動を行つてきたものであつて、原告らの指導なくしては、本件各発明について、着想から完成に至るまでの総合的な発明をするに足る資質は乏しかつたものである。

(三)  本件各発明は、その全過程を統轄指導していた原告飯田が、発明の主宰であるが、各発明ごとの発明分担は、以下のとおりである。

(1) 金張発明

イ オーステナイト系ステンレス鋼の熱処理と耐触性の研究(耐食性劣化の主因解折)=原告飯田

ロ オーステナイト系ステンレス鋼の加工硬化と再結晶=原告飯田

ハ 金張用オーステナイト系ステンレス鋼の組成決定(組成を炭素量0.03パーセント以下、一二パーセントニッケル―一二パーセントクロム鋼、又は炭素量0.03パーセント以下、一二パーセントニッケル―一五パーセントクロム鋼に決定し、これは後にJIS規格三八五Lとして採用された。)=原告飯田

ニ 金張実験計画立案=原告両名

ホ ステンレス鋼の試験発注(メーカーの選定、仕様の提示)=同右

ヘ ステンレス鋼の研削ならびに電解研磨(研削機、電解研磨槽およびニッケルメッキ槽の製作)=同右

ト 銀鑞材の選定試作(銀―銅共晶鑞……JIS規格 Bag―8)=原告飯田

チ 非酸化性熱処理炉(複合および焼鈍)の検討=原告両名

リ ステンレス鋼の圧延試験(現場指導)=原告藍川

ヌ 試作実験(現場指導)=原告藍川

ル 試作金張材の実用試験(得意先数社に依頼)=原告飯田

オ 試作金張材の検査指導(機械的性能、金厚分布等について)=原告飯田

ワ ステンレス金張屑から純金の回収指導=原告藍川

(2) 線素材発明

イ 棒状金属体の軸方向衝撃荷重に対する塑性変形の考察=原告飯田

ロ 割型治具の考察=同右

ハ 多層金属複合板の試作=原告飯田、石川

ニ 多層金属複合薄板の深絞り(パイプの製作)=原告飯田、石川、鍵本

ホ 棒状金属体の表面仕上げ=原告飯田、鍵本

ヘ 複合実験=同右

ト 設備計画の立案、実施=原告両名、鍵本

チ 線引加工実験(加工率と焼鈍の関係)=原告飯田、鍵本

リ 試作材の検査=原告飯田、鍵本

ヌ 特許申請書の作成、審査に対する応答=原告飯田

(3) クラッド板発明

イ 在来の輻射加熱加圧方式クラッド法の欠陥を指摘し、改善方を指示した。(熱効力、生産性、およびクラッド品質の改善)=原告飯田

ロ 直接通電法によるクラッド方式の提案(電熱帯の作用機構に注目したもの)=石川

ハ 前記イ、ロ項の詳細な検討(直接通電法の欠陥すなわち大電力による作業の危険性、温度調節の至難、クラッド品質の不均一等から不採用とする。)=原告両名、青木、石川

ニ 熱伝達方式によるクラッド法の研究=同右

ホ 雲母を以て被覆せる薄板状金属電熱帯の試作を指示=原告飯田

ヘ 実験計画、設備計画の大要立案=原告両名、青木

ト 予備実験(熱電達昇温状況の観察、電熱帯の寿命測定等)=青木、石川

チ 温度調節法の研究(熱電対―温度計―自動通電切換装置)=原告両名、青木

リ 電気回路の設計=原告藍川、石川

ヌ 非酸化性雰囲気炉体の加圧構造=原告藍川、青木、石川

ル 特許申請書の作成、審査に対する応答=原告飯田

(4) 連続クラッド発明

イ 連続クラッド方式の研究指示=原告飯田

ロ コイル状異質金属重ね合せ体に直接通電クラッドする方法の実験(失敗、不可能を確認)=石川

ハ 非酸化性雰囲気高温炉中における黒鉛の摺動特性の研究=原告両名、青木

ニ 連続クラッド装置の構造大要提示=原告飯田

ホ 実験装置の製作=青木、石川、松永

ヘ 温度分布の計測=青木、松永

ト 電熱帯端部構造の改良=松永

チ 試作材の検査および実用試験=原告両名、青木、石川、松永

リ 生産用装置(付帯設備共)の設計製作=同右

ヌ 特許申請文案の作成指示=原告飯田

(四)  以上の点を考慮すれば、各発明者の各発明に係る権利の共有持分は、次のとおりであるというべきである。

(1) 金張発明

原告飯田 七〇パーセント

原告藍川 三〇パーセント

(2) 線素材発明

原告飯田 八〇パーセント

石川好一 一〇パーセント

鍵本正 一〇パーセント

(3) クラッド板発明

各自 二五パーセント

(4) 連続クラッド発明

原告飯田 五〇パーセント

原告藍川 一〇パーセント

その他三名 四〇パーセント

4(一)  原告らは、被告に対し、線素材発明及びクラッド板発明について、特許を受ける権利を譲渡し、被告は、これらにつき特許出願をし、前者につき次の(1)の、後者につき次の(2)の特許権を取得した。

(1) 特許番号 第六七七八一九号

出願日 昭和四二年九月二二日

公告日 昭和四七年八月一九日

登録日 昭和四八年二月一三日

特許請求の範囲 別紙(二)のとおり

(2) 特許番号 第八九五六二六号

出願日 昭和四五年二月一二日

公告日 昭和五二年三月八日

登録日 昭和五三年一月三〇日

特許請求の範囲 別紙(三)のとおり

(二)  原告らは、被告との間で、金張発明をノウ・ハウとして公開しないこととし、被告において独占的に実施することを合意し、また、連続クラッド発明については、被告の研究室に所属していた青木義雄、石川好一及び松永尚利の三名において特許出願のため明細書の草案の作成に着手したが、連続クラッド装置の製作に忙殺され特許出願するに至らず、金張発明と同様ノウ・ハウとされた。

5(一)  被告は、線素材発明及びクラッド板発明について特許を受ける権利を譲り受けた上、これにつき特許を受けたので、原告らに対しその実施によつて受けた利益に比例した相当の対価を支払う義務がある。この相当の対価は、製品売上高に対する割合を示す実施料率によるのが相当である。

(二)  また、被告は、金張発明及び連続クラッド発明については、営業上これを秘匿して他に模倣されることを防止し、公開による後発メーカーの誘発を阻止して多額の利潤を得るため特許出願をせず、ノウ・ハウとしてこれらを実施し、これによつて後記のような製品売上高をあげていたのであるから、特許された権利に準じ、これらを実施することによつて受けた利益に比例した相当の対価を支払う義務がある。この相当の対価は、ノウ・ハウにより生じた権利が、原告ら被告間においては、特許権と実質を同じくし、単に特許出願をしていないものであり、被告がその実施により受けた利益が莫大なことから、やはり、製品売上高に対する割合を示す実施料率によるのが相当である。

(三)  前記実施料率は、被告の利益率が一〇〇分の二以上であることから、理化学研究所の職務発明規程による職務発明に対する所内実施補償金を定めた推定特許実施料の最低額が、売上金から製造原価を引いた金額が売上金に対し一割以上のときに、売上金の一〇〇分の二とされていることを参考として定めるのが適当である。

6  被告は、金張発明を時計バンド材料の製造に、線素材発明を眼鏡材料の製造に、クラッド板発明を時計バンド材料と工業材料の製造に、連続クラッド発明を工業材料の製造に、それぞれ使用し、右製造に係る製品を販売したところ、昭和四九年三月一日から昭和五四年二月二八日までの売上高は、別紙(五)のとおりであつた。

7  各発明の完成につき被告が負担した設備、資材及び労力は、次のとおりであつた。

(一) 金張発明

(1) 実験のため利用した既存設備

切削機、研磨機、表面処理装置、熱処理炉、圧延機、切断機、羽布研磨機、金属顕微鏡、硬度計を、一日の稼働時間を八時間と総計して一日一時間の割で一週間合計七時間利用した。

(2) 実験資材

ステンレス鋼 五〇〇キログラム 価格三〇万円

金合金 八〇グラムのもの二枚 価格六万円

ただし、これは後に純金として自家設備により回収した。

(3) 労力

原告両名が一ヵ月の実験期間をかけたもので、他に工員二名各七時間。

(二) 線素材発明

(1) 実験設備

① 設計型保持治具試作費 五万円

② フリクションは、原告両名が東洋精器株式会社に材料を持ち込み、借用し、無償で済ませた。

③ 深絞金属パイプは、同じく葛飾プレス株式会社に製作を依頼し、無償で済ませた。

(2) 実験資材

ステンレス鋼丸棒 二〇キログラム 価格二万円

丹銅板、ニッケル板、銀鑞(Bag―8) 若干 価格一〇〇〇円

(3) 労力

発明者のみで一ヵ月の実験期間を要した。

(三) クラッド板発明

(1) 実験設備

設計型複合炉試作費 二〇万円

雲母被覆加熱板試作費 三万円

(2) 実験資材

ステンレス鋼板、丹銅板、銀鑞(Bag―8) 若干 価格五〇〇〇円

(3) 労力

発明者のみで三ヵ月の実験期間を要した。

(四) 連続クラッド発明

(1) 実験設備

設計型装置一式試作費 五〇万円

(2) 実験資材

洋白条 三キログラム

リン青銅条 二〇キログラム 価格合計三万円

(3) 労力

発明者及び工作員一名で六ヵ月の実験期間を要した。

8  前記6の被告の製品売上高及び前記7の本件各発明がされるについて被告が貢献した程度に、被告の利益率が一〇〇分の二以上であること、本件各発明が製品に使用された割合、更に、金張発明については、同発明の使用により生産されたステンレス金張製品が被告の主力製品となり、現在総売上高の約八〇パーセントを占めるまでに成長していること、金張発明はこの種複合金属材料としては画期的な世界初の商品開発といつても過言ではなく、当時金張材料の先発メーカーとして自負していた株式会社山本金属研究所が前記のとおり追随しようとして失敗したこと、その後このステンレス金張の生産は久しい間被告の独占するところとなつていたことを、連続クラッド発明については、現在板材金張生産量の四〇パーセント以上がこの装置の使用により賄われており、単純なクラッド装置の使用に比し数倍の生産性を有することを考慮すると、前記5の実施料率は、各発明につき、次のとおりとするのが相当である。

(1) 金張発明 一パーセント

(2) 線素材発明 一パーセント

(3) クラッド板発明 0.5パーセント

(4) 連続クラッド発明 0.1パーセント

9  以上によれば、原告らは、被告に対し、前記6の各発明を使用して製造した製品の売上高に前記7の各実施料率を乗じて得た額のうち、前記3(四)の各共有持分に応じた額の対価の支払を求める権利を有する。

右の額を発明ごとに計算すると、次のとおりとなる。

(1) 金張発明

原告飯田 5,967,626,000円×0.01×0.7=41,773,382円

原告藍川 5,967,626,000円×0.01×0.3=17,902,878円

(2) 線素材発明

原告飯田 914,361,000円×0.01×0.8=7,314,888円

(3) クラッド板発明

原告各自 (5,967,626,000+1,055,487,000)円×0.005×0.25=8,778,891円

(4) 連続クラッド発明

原告飯田 1,055,487,000円×0.001×0.5=527,743円(一円未満切捨)

原告藍川 1,055,487,000円×0.001×0.1=105,548円(一円未満切捨)

10  原告らは、被告に対し、昭和五四年七月二〇日、内容証明郵便により前記9の職務発明についての対価を同書面到達後三〇日以内に支払うよう催告し、同書面は、同月二四日、被告に到達した。

11  よつて、原告らは、被告に対し、前記9の職務発明についての対価のうち、原告飯田については、9の(1)の内金八〇〇万円、(2)の内金三〇〇万円、(3)の内金五〇〇万円及び(4)の内金二〇万円の合計金一六二〇万円、原告藍川については、9の(1)の内金四〇〇万円、(3)の内金五〇〇万円及び(4)の内金一〇万円の合計金九一〇万円、並びにこれらに対する弁済期の翌日である昭和五四年八月二四日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。〈以下、省略〉

理由

一〈証拠〉によれば、遅くとも昭和四〇年一〇月ころまでに、当時被告の技術担当の取締役(常務)で技術関係の総責任者であつた原告飯田、被告の製造担当の取締役(製造部長)で製品製造の責任者であつた原告藍川(原告らが在任中を通じこれらの役職にあつたことは被告の自認するところである。)、被告の研究室員であつた石川好一らが何らかの形で関与することによつて、別紙(一)のとおりの技術的思想の創作すなわち金張発明が完成されたこと、これについて、原告飯田は、特許出願すれば必ず特許されるとの確信を得たが、当時ステンレス金張の技術を有していた企業は他に全くなかつたし、当時の被告は技術面においてはまだまだ弱体であつたから、これを特許出願して公開すると、競争企業にヒントを与える結果になり、必ず追い抜かれることになると考え、これをノウ・ハウとして秘匿することが被告の利益になると判断し、被告の役員会においてその趣旨を説明し、あえて特許出願をしないものとしたこと、その後、金張発明は被告において実施されたことが認められ、以上の認定を覆すに足りる証拠はない。

また、〈証拠〉によれば、前記役職にあつた原告飯田、石川好一及び被告の従業員で原告藍川の補佐役であつた鍵本正の三名が関与して別紙(二)のとおりの技術的思想の創作すなわち線素材発明が完成され、これについての特許を受ける権利が発明者らから被告に譲渡されたことが認められ、線素材発明が、被告により、昭和四二年九月二二日特許出願され、昭和四八年二月一三日特許登録されたことは、当事者間に争いがない。

二そこで、次に、抗弁2(消滅時効の援用)について検討する。

1 職務発明について、特許を受ける権利を使用者に承継させたときは、発明者である従業員は相当の対価の請求権を取得するが、特許法第三五条第三項の解釈上、右請求権の発生するのは、特許を受ける権利の承継の時であると解するのが相当である。これは、同法において、「特許を受ける権利」が特許権とは別個の独立した権利とされており(同法第三三条)、右の対価が「特許を受ける権利」を承継させることに対する対価である以上、当然のことであるというべきである。したがつて、右請求権についての消滅時効は、その行使をすることができる時、すなわち承継の時から進行する。

原告は、この点に関し、対価を登録報酬と実施報酬とに分けて、種々論じているが、特許を受ける権利を承継した使用者が、特許出願するか否か、これを実施するか否かは、譲受人たる使用者の自由であるから、原告のような解釈をとると、出願も実施もしない場合には対価の請求をすることができなくなり、不合理である。また、特許を受ける権利という一個の権利の一回的譲渡の対価は、譲渡時において一定の額として算定しうるはずのものであるから、後に登録になつたか否か、実施により利益を生じたか否か等の事情によつて、対価の額がその時点で初めて定まると解するのは、相当でない。これらの事情は、後日になつてから譲渡時における「相当の対価」を評定するに当たり参考とすることはできるが、これを直接の算定根拠とすることは妥当でない。特許法第三五条第四項は、対価の額の算定につき、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」を考慮すべきことを定めているが、右利益は、「受けるべき利益」とされていることから、その発明により現実に受けた利益を指すのではなく、受けることになると見込まれる利益、すなわち、使用者等が当該権利承継により取得しうるものの承継時における客観的価値を指すものであることが明らかである。

なお、〈証拠〉によれば、職務発明に関する規程を有する我国の企業においては、一般に、特許等の出願時に出願補償として、特許等登録時に登録補償として、又は実施をしたときに実績補償として、金員を支払うこととしているものが多いことが認められるが、これらはあくまで、社内規程による具体的取決めがある企業における実態を示すものにすぎず、このような規程を持たない場合に、特許法第三五条第三項、第四項の規定に基づいて対価の請求をする場合についての解釈を左右するものではない。

2次に、原告は、いわゆるノウ・ハウに関しては、対価請求権の消滅時効期間は、実施により利益を生じた時から進行する旨主張するので、これについても検討する。

特許法第三五条の職務発明は、特許発明に限定されてはいないから(同条第一項)、発明でありさえすれば、特許されたものであろうとなかろうと、同条の適用があるものと解される。したがつて、いわゆるノウ・ハウについても、その内容が発明の実質を備えるものであれば、同条の職務発明となりうる。

ところで、従業者のした発明を、使用者の営業上の利益を守るため、ノウ・ハウとして秘匿して、使用者においてのみ独占的に実施する旨の使用者と従業者間の合意は、いわば、当該発明についての特許を受ける権利を使用者の支配下におき、これを使用者の意思によつてあえて特許出願をしないものとするのであるから、通常の場合には、右合意のときに特許を受ける権利の承継があるもの又はこれと同視してよいものというべきである。したがつて、特段の事情のない限り、右合意の時に、特許を受ける権利の承継があり、その対価の請求権が発生するものというべく、対価請求権の消滅時効期間も、通常の特許を受ける権利の場合と同じく、右の時から進行するものというべきである。

3  原告は、また、対価請求権の消滅時効期間は一五年である旨主張するが、そのような規定は存在せず、右主張は原告独自の見解というほかはなく、右主張は採用しない。

4  前記認定の事実によれば、金張発明は遅くとも昭和四〇年一〇月ころには完成し、これを被告の利益のため特許出願しない旨の合意が発明者らと被告との間で成立したものであるから、そのころ、発明者らから被告へ特許を受ける権利が譲渡されたものと推認され、右認定を左右するに足りる特段の事情は認められない。また、前記認定の事実によれば、線素材発明については、遅くともその特許出願のされた昭和四二年九月二二日までに、発明者らから被告に対し特許を受ける権利が譲渡されたものと認められる。そして、本件訴訟の訴状が当裁判所に提出されたのが昭和五四年一一月二七日であることは、本件記録上明らかであり、また、請求の原因10については当事者間に争いがないから、原告らが金張発明及び線素材発明に関する対価の支払を被告に対し催告したのは昭和五四年七月二四日であつたことになる。そうすると、金張発明が発明の実質を備えたものであるか否か、原告らがその発明者であるか否か、また、原告飯田が線素材発明の発明者であるか否か等の点について、原告らが請求の原因において主張する事実がすべて認められるとしても、これらの発明に関する原告らの各対価請求権は、右催告時には、いずれもその権利を行使しうる時から各一〇年を経過していることが明らかであるから、被告の消滅時効の援用により、時効消滅したものといわざるをえない。したがつて、被告の消滅時効援用の抗弁は理由がある。

5  以上のとおりであるから、金張発明及び線素材発明に係る原告らの請求は、その余の点について検討するまでもなく、失当であることに帰する。

三クラッド板発明についての原告らの対価請求権の存否について検討する。

1  〈証拠〉を総合すると、前記の役職にあつた原告両名、当時の被告研究室長青木義雄、石川好一に、当時の被告研究室員松永尚利及び藍川礼三も加えた六名が、何らかの形で関与することによつて、昭和四四年末ないし昭和四五年初めごろ、別紙(三)のとおりの技術的思想の創作すなわちクラッド板発明がされ、これについての特許を受ける権利が、発明者らから被告に譲渡されたことが認められ、被告が、昭和四五年二月一二日、クラッド板発明について特許出願し、これが、昭和五三年一月三〇日、特許登録されたことは、当事者間に争いがない。

2  〈証拠〉によれば、クラッド板発明の特許出願の願書においては、同発明の発明者は、石川好一、青木義雄、原告藍川及び原告飯田の四名とされていることが認められる。そして、〈証拠〉を総合すると、クラッド板発明が完成されるに至つた手順等について、次の各事実が認められる。

(一)  原告飯田が全体の作業を総括指揮した。

(二)  具体的な実験、研究等の作業は、研究室に任され、石川を中心として作業が行われた。

(三)  主として石川が提案したアイデアについて、研究室内で、また時に原告飯田及び同藍川も加わつて、討議をした。

(四)  研究室における討議とは別に、原告両名及び青木研究室長による討議が、原告飯田を中心に行われた。

(五)  研究室での研究、討議等の結果は、青木がとりまとめて原告飯田及び藍川に報告し、これに対し、研究開発の大筋に関する事項について、原告らから青木に具体的な意見、指示が出され、これを青木が研究室に持ち帰るということが繰り返された。

(六)  また、石川は、原告藍川に相談を持ち掛け、具体的な指示を受けた。

(七)  特許出願に際し、発明者を前記四人と表示することは、原告飯田が裁定したが、これについては、右四人共、当時も現在も特に異存がない。

そして、原告両名、青木義雄、石川好一の学歴及び社歴が、請求の原因3(二)の(1)ないし(4)のとおりであることについては、当事者間に争いがない。

以上の各事実と弁論の全趣旨を総合考慮すれば、クラッド板発明の発明者は、原告両名、青木義雄、石川好一の四名であり、同発明についての特許を受ける権利の共有持分は、同発明完成のための寄与の程度に従い、各人が二五パーセントを取得したものと認めるのが相当である。この認定を左右するに足りる証拠はない。

3  被告の主たる業務が金属加工であることは、被告が明らかに争わないから、自白したものとみなされ、また、原告飯田が被告の技術担当の取締役で技術関係の総責任者であつたこと、原告藍川が被告の取締役製造部長で製品製造の責任者であつたことは、前記のとおりである。したがつて、別紙(三)のとおりのクラッド板発明は、被告の業務範囲に属することが明らかであり、また、新規なクラッド板の製造方法の開発は、技術又は製造の責任者である原告らの職務範囲というべきであるから、クラッド板発明は、原告らの職務に属する発明と認められる。

4  したがつて、原告らは、右各持分に応じて、クラッド板発明について、特許を受ける権利を前記認定のとおり被告に譲渡したことに対して、相当の対価の支払を受ける権利を有する。

四次に、連続クラッド発明についての原告らの対価請求権の存否について検討する。

1  〈証拠〉によれば、前記の役職にあつた原告両名、青木義雄、石川好一及び松永尚利の五名が関与することによつて、昭和四九年末ころまでに、別紙(四)のとおりの技術的思想の創作すなわち連続クラッド発明が完成されたことが認められる。なお、原告飯田本人尋問の結果中には、発明完成の時期について昭和四八年暮ころとの部分が存し、原告藍川の尋問結果中にもこれに沿う部分があるが、後記認定のとおり、発明完成後間もなく、実験用に試作した連続クラッド装置を生産用に転じたこと、その時期が昭和五〇年九月であること、被告の第二〇期(昭和五〇年三月から昭和五一年二月まで)決算報告書(甲第一九号証)の当期営業概況の欄に「ようやく完成の域に達した新技術」と記載されていることから、発明完成時期は、昭和四九年暮ころと認むべきである。

2  連続クラッド発明については、発明の実質を備えていたか否かにつき争いがあるから、この点につき検討する。右各証拠によれば、連続クラッド発明の完成により、クラッド板発明においては製造されるクラッド板の長さが炉の大きさに限定され、被告においては約六〇センチメートルのものまでしか製造することができなかつたものを、理論上は無限に長いものを製造することが可能となり、生産性及び商品価値が飛躍的に増大したこと、連続クラッド発明のほかには、このように長尺のクラッド板を作成する技術がなく、需要者においてこのような製品が切望されていたこと、被告研究室において文献を研究したり、中外電工株式会社の線材を連続的にクラッドする装置を見学したりしてヒントを得たが、クラッド板についての技術ではなかつたこと、連続クラッド発明については、線素材発明及びクラッド板発明と同様に特許出願をするために、原告飯田が青木義雄に指示して、同人及び石川好一が明細書の草案を作成したが、実験用に試作した連続クラッド装置によりそのまま実際の生産を開始することになつたり、生産用の装置を作成しなければならなくなつたことから、研究室員が多忙となり、時期を失したため、遂に特許出願するに至らなかつたこと(被告の研究室員が明細書の草案を作成したが、出願するに至らなかつたことは、当事者間に争いがない。)が認められる。そして、別紙(三)と(四)とを対比すれば、連続クラッド発明がクラッド板発明と全く別個の技術的思想の創作であることが明らかである。これらの事実に、前記のとおり、クラッド板発明が昭和四五年二月一二日に出願され特許登録されたこと及び弁論の全趣旨を総合すれば、連続クラッド発明は、発明の実質を備えていたものと認めるのが相当である。

3  そして、〈証拠〉によれば、被告においては、右発明完成当時、新しく開発した技術について特許出願するか否かは、技術面に関する最高責任者であつた原告飯田が決めて取締役会に報告する慣行であつたこと、連続クラッド発明についても特許出願準備中である旨を原告飯田が取締役会に報告したことが認められ、この事実と、前記認定の原告飯田の指示により青木、石川が明細書草案を作成した事実、線素材発明及びクラッド板発明についてはいずれも出願前に特許を受ける権利が被告に譲渡された事実によれば、連続クラッド発明についても、その完成の直後ごろに、特許を受ける権利が発明者から被告に譲渡されたものと推認することができ、これを覆すに足りる証拠はない。

被告は、この点に関し、まず、特許出願の準備が整つていない段階で被告が特許を受ける権利を譲り受けたとは考えられないと主張するが、特許を受ける権利の譲渡がいつなされるかについて、原則的時期があるものと認めることはできず、〈証拠〉によれば、本件四つの発明を通じて、特許出願をするか否かの決定は、発明者らにおいてされたものではなく、被告においてされたものと認められるから、前記のとおり、連続クラッド発明についても、線素材発明及びクラッド板発明についてと同様、特許出願をする予定で明細書作成の作業にとりかかつた等の事実から、被告が特許を受ける権利を自己の支配下に移し、特許出願をする方針であつたことを推認することができるものというべきであり、前記のとおり特許を受ける権利の譲渡があつたものと推認するのが適当である。

また、被告は、抗弁1において、連続クラッド発明についての特許を受ける権利を原告らから被告が譲り受けたとすると、それは取締役と会社間の自己取引に当たり、取締役会の承認がなければ無効である旨主張する。しかし、前記認定の事実によれば、原告飯田が連続クラッド発明につき出願準備中である旨の報告をした時点で、取締役会の承認があつたと認むべきであるから、結局、右主張も理由がない。すなわち、前記のような慣行の存在の下で、原告飯田が出願準備中との報告をした場合、当該出願が、線素材発明及びクラッド板発明と同様、特許を受ける権利を譲り受けた上、被告名義によりされるものであることを当然意味すると見られ、既に出願準備を進めているということは、近く被告名義で出願することを予定している旨の報告と解されるから、特許出願に関する事項につき事実上の判断権限を有し、最高責任者である担当取締役が、その旨の報告をし、これに対し何らかの異議が他の取締役から述べられたことを認むべき証拠はないから、これが承認されたものと推認すべきである。

4  〈証拠〉を総合すると、連続クラッド発明が完成されるに至つた手順等について、次の各事実が認められる。

(一)  原告飯田が全体の作業を総括指揮した。

(二)  研究室において研究開発にとりかかる前に、当時入院中の青木研究室長に対し、原告飯田が、原理図を示しながら、連続的にクラッドする装置の構想を語つた。その後、研究室において種々検討し、他の手段についても研究したが、結局、原告飯田の語つたものに極めて近い原理を用い、それを簡素化したものとして完成されるに至つた。

(三)  中外電工株式会社において線材を連続的にクラッドする技術を開発していることを知つて、青木、石川、松永が同社を訪れ、細かな説明はノウ・ハウであるとして受けられなかつたものの、その概略についての知識を得、また外国の参考文献をもらい、カーボンの間をクラッドすべき金属を移動させながら加熱加圧するという発明の重要なヒントを得て、これを板材に応用することにした。

(四)  具体的な実験、研究、討議の手順及び分担は、クラッド板発明の場合とほぼ同様であつた。

(五)  装置の完成に至るまでの細かい工夫は、石川が中心となり、青木、松永の三名で行つた。

(六)  原告藍川は、主として工場における製造に際しての安全性の面と、クラッド板の品質の面から、討議の場で、また個々的に原告飯田、石川等に意見を述べ、指示をした。

そして、松永尚利の学歴及び社歴が請求の原因3(二)(5)のとおりであることは、当事者間に争いがない。

以上の各事実と、前記原告両名、青木義雄、石川好一の学歴及び社歴並びに弁論の全趣旨とを総合考慮すれば、連続クラッド発明の発明者は、原告両名、青木義雄、石川好一及び松永尚利の五名であり、同発明についての特許を受ける権利の共有持分は、同発明完成のための寄与の程度に従い、原告飯田が五〇パーセント、原告藍川が一〇パーセント、青木が二〇パーセント、石川、松永が各一〇パーセントを取得したものと認めるのが相当である。この認定を左右するに足りる証拠はない。

5  別紙(四)のとおりの連続クラッド発明が、被告の業務範囲に属し、原告らの職務に属する発明であると認められることは、クラッド板発明について判示したところと同様である。

したがつて、原告らは、右各持分に応じて、連続クラッド発明についても、特許を受ける権利を前記認定のとおり被告に譲渡したことに対して、相当の対価の支払を受ける権利を有する。

五 三及び四において認定した事実に基づき原告らが取得した各対価請求権によつて原告らが請求しうる対価の額は、各発明により被告が受けるべき利益の額と、各発明がされるについて被告が貢献した程度を考慮して定めなければならない。

ところで、職務発明については、これが特許されたときに、使用者は、法律上当然に、無償かつ無制限の通常実施権を有する(特許法第三五条第一条)。当該発明について特許がされる前、また、特許を出願しなかつた場合には、実施権という観念は法律上存在しないが、右規定の理は、この場合にも同様に適用されるべきである。すなわち、発明について特許を出願しない場合は、理論上は万人が実施しうるわけであるが、これがノウ・ハウとして秘匿されるときは、事実上、これを知つている使用者のみが実施しうることとなるところ、この実施も、当然に無償かつ無制限のものというべきであると解される。

右の点を考慮すると、職務発明がされた場合、当該発明を無償で実施する権原を有するという点においては、使用者が従業員から特許を受ける権利を譲り受けた場合と譲り受けなかつた場合とにおいて差異はなく、職務発明について従業者から特許を受ける権利を譲り受けることにより、使用者は当該発明につき特許出願をして登録を受ければ、あるいは、これをノウ・ハウとして秘匿すれば、発明の実施を排他的に独占しうる地位を法律上又は事実上取得できる点において、右権利を譲り受けない場合との差異が生ずるというべきである。したがつて、譲渡の対価の額を定めるに当たり考慮すべき「発明により使用者が受けるべき利益」とは、使用者が発明を実施することにより受けることになると見込まれる利益を指すのではなく、右のような地位を取得することにより受けることになると見込まれる利益を指すものと解するのが相当である。

そして、右のような地位は、未だ特許を受けておらず、排他的独占権が現実のものとなつていない点、及び特許を受けることができるか否かが不確実であるという点等において、発明者である従業者により特許出願がされ、特許を受けた後に、特許権を譲り受けることによつて使用者が取得する地位とは、異なるものであり、これに従つて、前記の利益の額も、それぞれの場合ごとに異なるものといわなければならない。

そして、職務発明についての特許を受ける権利の譲渡の対価請求権は、前判示のとおり、譲渡時において発生し、その額も客観的に確定するものであるから、その時を基準時として、以上のような観点から、その額を算定すべきである。

六そこで、まず、クラッド板発明について原告らが請求しうる対価の額について判断する。

1  原告らが被告に対しクラッド板発明について特許を受ける権利の共有持分を譲渡したのは、前記認定のとおり、昭和四四年末ないし昭和四五年初めころであつたところ、〈証拠〉を総合すれば、次の各事実が認められる。

(一)  被告は、従来用いていた方法では、約二〇センチメートルの長さのクラッド板の製造しかできず、これを圧延して約五ないし六メートルの長さのクラッド板製品を製作することができるにすぎなかつたのに、クラッド板発明を実施することにより、約三倍の約六〇センチメートルの長さのクラッド板の製造ができ、これを圧延することによつて約一五ないし一八メートルの長さのクラッド板製品を製作することが可能となつた。製品の長さが約三倍になることにより、より長尺のクラッド板を求めていた需要者の要望にある程度応えることができた。

(二)  また、クラッド板発明の方法によれば、従来の方法に比し、熱効率がよいため、生産に要する時間を短縮することができ、長尺化と相まつて、生産性が高くなつた。

(三)  更に、従来の方法に比し、加圧方式が安定したこと等により、製品の品質も向上した。

(四)  被告は、昭和四五年一一月に、クラッド板発明を実施するための装置を備えた工場を完成し、稼動を開始した。

(五)  その後、クラッド板発明を基礎にして連続クラッド発明がされ、更に長尺のクラッド板が製造可能となり、昭和五〇年九月に実験用の連続クラッド装置が生産の分担を開始し、昭和五一年ころから本格的に連続クラッド装置が稼動するようになつた。

(六)  被告は、クラッド板発明を時計バンド材料と工業材料であるステンレス金張等の板材の生産に使用した(クラッド板発明を時計バンド材料及び工業材料の生産に使用したことは、当事者間に争いがない。)ところ、昭和四五年ころから昭和五〇年ころにかけては、日本経済界全体としては、それまでの好況から、景気が下向きに転じ、また、昭和四八年四月一日に金が自由化されたという状況下にあつて、工業材料の売上高は増減をくり返したが、時計バンド材料の売上高は、時計業界が輸出が堅調なこともあつて、総じて安定した伸びを示した。昭和四五年度から昭和五〇年度まで(年度は、三月一日から翌年二月末日まで)の被告の時計バンド材料及び工業材料の売上高は、別紙(六)及び別紙(五)の該当欄のとおりであり(別紙(五)については、当事者間に争いがない。)右(四)、(五)の事実から被告がクラッド板発明を実施した主要な時期を昭和四五年一一月から昭和五一年二月までと見ると、この間の時計バンド材料及び工業材料の売上高の合計は、三〇億二九二〇万七〇〇〇円となる(昭和四五年一一月から昭和四六年二月までの売上額は、昭和四五年度の売上額の三分の一として、千円未満を四捨五入する。)。右各年度における右両材料の売上高の合計が被告の全売上高に占める割合は、平均約八六パーセントであり、この間の被告の売上総利益から一般管理販売費を差引いた営業利益は、別紙(七)の該当欄のとおりであつた。

(七)  被告と競争関係にあつた株式会社山本金属研究所が、昭和四五、六年ごろに倒産し、それ以降、被告は、主要な競争会社が存在しない状況下で、加工用ステンレス金張材料について九〇パーセント以上の市場占有率を有していた。

(八)  被告が金張業界で確固たる地位を築いていたのは、ステンレスに金張を施すことを初めて可能にした金張発明によるところが大きく、これに比較すれば、クラッド板発明が被告に与えた利益は相対的に小さいといつてよい(原告の主張する実施料率が、金張発明は一パーセントであるのに対して、クラッド板発明は0.5パーセントであることも、このことを示している。)。

(九)  被告の研究室は、昭和四〇年ころに新設されたが、当初はほとんど試験、研究のための機器がなかつたところ、クラッド板発明がされるころまでには、徐々に設備が充実し、ビッカース硬度計、金属顕微鏡、引張試験機、環境試験機、電気炉等が装備されていた。クラッド板発明は、すべて、勤務時間中に、これらの機器及び被告の工場の製造用設備を使用し、工場の製造担当の従業員の協力を得、また、被告の提供したマイカ、ステンレス鋼等の資材を用いて、実験、装置等の試作が行われた結果、完成されたものである。ただし、資材等に要した費用は、それほど多くはなかつた。

(一〇)  被告の昭和四四年度から昭和五〇年度までの従業員数の推移は、別紙(八)の該当欄のとおりであつた。

(一一)  クラッド板発明に関し、石川好一が、昭和四五年一一月二五日、被告の従業員就業規則第三六条第一項第三号(業務上有利な発明改良又は考案のあつた場合の表彰)による特別功労者として表彰を受け、賞金一〇万円を授与されたが、他にクラッド板発明に関し表彰、賞金の授与、その他何らかの優遇措置を受けた発明者はいなかつた。

そして、原告両名を含む発明者の被告における地位、職務が請求の原因3(二)のとおりであつたことは、前記のとおり、当事者間に争いがない。

2  以上のとおり、被告はクラッド板発明について特許を受ける権利を原告から譲り受けてこれにつき特許権を得、時計バンド材料と工業材料の製造のために同発明を自ら実施し、これを実施した主要な期間と認められる昭和四五年一一月から昭和五一年二月までの間に右両材料の販売により合計三〇億二九二〇万七〇〇〇円の売上を得たのであるが、前示のとおり職務発明について特許を受ける権利を譲渡した対価の額を定めるに当たり考慮すべき「その発明により使用者等が受けるべき利益」とは、使用者等が発明を実施することにより受けることとなると見込まれる利益を指すのではなく、発明の実施を排他的に独占しうる地位を取得することにより受けることになると見込まれる利益を指すと解すべきであるので、右売上額自体もしくは右売上額から材料費、一般管理販売費等の必要経費を差引いた営業利益をもつて、職務発明により使用者が受け取つた利益としこれに基づいて譲渡の対価を算定することは、相当でない。これに対し、職務発明について特許を受ける権利を従業者から譲り受けてこれにつき特許権を得た使用者が、この特許発明を他者に有償で実施許諾し実施料を得た場合、得た実施料は、職務発明の実施を排他的に独占しうる地位を取得したことによりはじめて受け取ることができた利益であるから、この額を基準に使用者の貢献度その他諸般の事情を考慮して譲渡の対価を算定することは十分に合理的であるといえる。

そこで、本件において、被告がクラッド板発明を自らは実施せず第三者に実施許諾し、この第三者が同発明を実施して時計バンド材料と工業材料を製造しこれを販売したと仮定すると、右第三者は少くとも被告と同額の売上を得ることができたと推認でき、また、前記認定の諸事実に照らし、その実施料率は売上高の二パーセントを相当とすると認められるから、前記の三〇億二九二〇万七〇〇〇円に一〇〇分の二を乗じて得られる六〇五八万四一四〇円をもつて、クラッド板発明について被告がその実施を排他的に独占しうる地位を得たことにより受けることになると見込まれる利益と推認することができる。そして、このことと前記認定の諸事実から認められるところの同発明がされるについて被告が貢献した程度その他諸般の事情を考慮すると、発明者らが被告に対しクラッド板発明について特許を受ける権利を譲渡したことに対する対価は、全体で右六〇五八万四一四〇円の約一〇パーセント弱に当たる六〇〇万円とするのが相当であり、原告両名は右の対価のうち各二五パーセントの支払を受ける権利を有するから、各一五〇万円の対価請求権を有するものと認められる。

そして、原告らが被告に対し昭和五四年七月二四日到達の内容証明郵便によりクラッド板発明についての原告主張の対価を同書面到達後三〇日以内に支払うよう催告したことは、当事者間に争いがない。

七次に、連続クラッド発明についての原告らの対価請求権の額について判断する。

1  原告らが被告に対し連続クラッド発明について特許を受ける権利の共有持分を譲渡したのは、前記認定のとおり、昭和四九年末ころであつたところ、〈証拠〉を総合すれば、次の各事実が認められる(一部既述したものと重複)。

(一)  被告は、クラッド板発明の実施によつては、約一五ないし一八メートルの長さのクラッド板製品しか製作することができなかつたのに、連続クラッド発明を実施することにより、理論的には無限に長いクラッド板を、実際にも約一八〇メートルの長さの製品を製作することができるようになり、より長尺のクラッド板を求めていた需要者の要望が満たされた。

(二)  右の製品の長尺化により、生産性が飛躍的に向上した。

(三)  連続クラッド発明を実施することにより、生産工程をオートメーション化することが可能となつた。

(四)  前記のとおり、連続クラッド発明の構成のうち、カーボンの間をクラッドすべき金属を移動させながら加圧加熱するという点は、既に中外電工株式会社が線材に関して実施していたもので、これを参考にして、板材に応用したものであり、また、電熱体に生じた熱を伝達させることによりクラッドすべき金属を加熱するという点は、既にクラッド板発明において開発していたものを応用したものである。

(五)  前記のとおり、被告は、昭和五〇年九月に実験用の連続クラッド装置を生産用に転用し、昭和五一年ころから本格的に連続クラッド装置による生産を開始して、その後も継続的に同装置を使用している。もつとも、最近では需要が減つたため、その使用もひところよりは減つている。

(六)  被告は、連続クラッド発明を時計バンド材料と工業材料であるステンレス金張等の板材の製造に使用した(連続クラッド発明を工業材料の製造に使用したことは、当事者間に争いがなく、同発明が板材金張生産量の四〇パーセント以上に使用されていることは、原告らの自認するところである。)ところ、昭和五〇年ころ以降、日本経済界全体としては、全般に景気が低迷し、昭和五二年ころからは円高による輸出の不調、昭和五四年には金価格の暴騰等の状況であつたが、時計に関しては対米輸出の好調等から、時計バンド材の需要が大幅に増加し、クラッド板発明による生産性向上と相まつて、昭和五一年から急速に売上高を伸ばし、昭和五二年度には、売上高、利益とも過去最高を示した。しかし、昭和五三年からは、時計の輸出も不調に転じ、金の暴騰等もあつて、需要が大幅に減少している。この間、工業材料の売上高は、やや上向きながら、一進一退を続けた。そして、右(五)の事実から認められるところの被告が連続クラッド発明を本格的に実施した昭和五一年度から昭和五六年度までの被告の時計バンド材料及び工業材料の売上高は、別紙(五)及び別紙(六)の該当欄のとおりであり(別紙(五)については、当事者間に争いがない。)、その合計は、九九億五五五七万五〇〇〇円となる。右各年度における右両材料の売上高の合計が被告の全売上高に占める割合は、平均約八四パーセントであり、この間の被告の売上総利益から一般管理販売費を差引いた営業利益は、別紙(七)の該当欄のとおりであつた。

(七)  被告は、右の時期も、金張業界で独占的地位を保つていたが、根本的には、やはり、金張発明がこれをもたらしたものであり、連続クラッド発明が被告に与えた利益は金張発明に比し相対的に小さいといつてよい(原告の主張する実施料率が、金張発明は一パーセントであるのに対して、連続クラッド発明は0.1パーセントであることも、このことを示している。)。

(八)  連続クラッド発明は、すべて、勤務時間中に、被告の研究室及び工場の前記のような機器、設備を使用し、また、被告の提供した資材を用いて、実験、試作が行われた結果完成されたものである。特に、熱処理装置の試作には、相当の費用を要した。

(九)  被告の昭和五一年度から昭和五六年度までの従業員数の推移は、別紙(八)の該当欄のとおりであつた。

(一〇)  連続クラッド発明に関し、松永尚利が、昭和四八年一一月二三日、他の事項と合わせて、職務発明等功労者として表彰を受け、五五〇〇円相当の電気カミソリを授与されたが、他に連続クラッド発明に関し表彰、賞品の授与、その他何らかの優遇措置を受けた発明者はいなかつた。

そして、原告両名を含む連続クラッド発明の発明者の被告における地位、職務が請求の原因3(二)のとおりであつたことは、前記のとおり、当事者間に争いがない。

2  以上の事実を前提に、連続クラッド発明についてもクラッド板発明について述べたと同様に、連続クラッド発明を自らは実施せず第三者に実施許諾し、この第三者が同発明を実施して時計バンド材料と工業材料を製造しこれを販売したと仮定すると、右第三者は少くとも被告と同額の売上を得ることができたと推認でき、また、連続クラッド発明はクラッド板発明の改良にかかる発明である点、その他前記認定の諸事実に照らし、その実施料率は売上高の0.2パーセントを相当とすると認められるから、前記の九九億五五五七万五〇〇〇円に一〇〇〇分の二を乗じて得られる一九九一万一一五〇円をもつて、連続クラッド発明について被告がその実施を排他的に独占しうる地位を得たことにより受けることになる利益と推認することができる。そして、このことと前記認定の諸事実から認められるところの同発明がされるについて被告が貢献した程度その他諸般の事情を考慮すると、発明者らが被告に対し連続クラッド発明について特許を受ける権利を譲渡したことに対する対価は、全体で右一九九一万一一五〇円の約七パーセント強に当たる一四〇万円と認めるのが相当であり、原告飯田は右の対価のうち五〇パーセントの支払を受ける権利を有するから、七〇万円の対価請求権を有し、原告藍川は右の対価のうち一〇パーセントの支払を受ける権利を有するから、一四万円の対価請求権を有するものと認められる。

そして、原告らが被告に対し昭和五四年七月二四日到達の内容証明郵便により連続クラッド発明についての原告主張の対価を同書面到達後三〇日以内に支払うよう催告したことは、当事者間に争いがない。

八以上の事実によれば、原告らの本訴請求は、原告飯田については、クラッド板発明に係る対価一五〇万円と連続クラッド発明に係る対価七〇万円につき請求の限度である二〇万円の合計一七〇万円と、原告藍川については、クラッド板発明に係る対価一五〇万円と連続クラッド発明に係る対価一四万円につき請求の限度である一〇万円の合計一六〇万円と、これらに対する履行期の翌日である昭和五四年八月二四日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余の部分は失当であるから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条本文の規定を、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項の規定を、各適用して、主文のとおり判決する。

(牧野利秋 川島貴志郎 大橋寛明)

別紙 (一)

炭素量0.03パーセント以下の一二パーセントニッケル、一二パーセントクロムステンレス鋼又は炭素量0.03パーセント以下の一二パーセントニッケル、一五パーセントクロムステンレス鋼と金合金の間に、銀銅共晶鑞を介在させて、非酸化性雰囲気炉中で加熱加圧し、当該金属の複合体をつくり、これに適当な加工度の圧延と非酸化性雰囲気炉中摂氏七八〇度程度の焼鈍を繰返して、所望の厚み硬さのステンレス金張を製造する方法

別紙 (二)

貴金属単体又は合金の均一内径の管に、該管よりその長さが長く、かつ該管内径より僅かに小なる外径のステンレス鋼、ニッケル、ベリリウム銅又はその他の銅合金を芯材として挿入し、これを高衝撃荷重に耐える治具内に該芯材が該管の両端より突出するよう固定し、該芯材にその軸方向に衝撃加圧を加えて該芯材を軸芯に対し放射方向に膨張せしめて、管と芯材を密接一体化し、該一体化した組立体を治具から取外して加熱し、管構成金属と芯材構成金属とを互いに拡散密着せしめてなる貴金属の複合線素材の製造法

別紙 (三)

クラッドすべき異質金属板を積み重ねた一対の積重ね組を各組それぞれ耐熱性電気絶縁材で被覆せる薄板状の発熱用金属電熱帯の両側で前記電気絶縁材に接して配置してこれらで積重ね体を形成し、前記積重ね体の両側から断熱体を介して積重ね体を均一に挾圧した状態で前記電熱体に通電せしめ前記電熱帯からの発熱を前記金属板に熱伝達させ且つ前記挾圧状態で所要時間電熱帯を金属板間が均一に固相接着又は融着するに要する温度に保持し然る後加熱を止めて挾圧状態で放冷することを特徴とした圧延のための異種金属クラッド板の製造法

別紙 (四)

二枚の長方形黒鉛板を重ね、それぞれの外側にほぼ同形の雲母を以て被覆せる薄板状金属熱電帯を配し、これらを左右に開口部を有する耐熱鋼板製上下割型炉体に収納、上部炉体には重錘又はバネ機構により内部積重ね体に荷重のかかる構造とし、炉内は非酸化性雰囲気として上下電熱帯に通電し所定の炉温に保持、炉体開口部より二ないし三種の異質金属条を重ね合せながら二枚の黒鉛板間を通過せしめ、伝達加熱方式により該異質金属条を連続的にクラッドする装置

別紙 (五)

年度

時計バンド材料

工業材料

眼鏡材料

昭和四九年度

五九〇、九六六、〇〇〇

一八九、七四三、〇〇〇

一四七、七二〇、〇〇〇

昭和五〇年度

六一三、一七〇、〇〇〇

一七三、五九一、〇〇〇

一〇四、三九二、〇〇〇

昭和五一年度

一、一〇一、九一六、〇〇〇

二七一、一七九、〇〇〇

二〇八、八六六、〇〇〇

昭和五二年度

二、〇〇〇、七六三、〇〇〇

一七五、五七七、〇〇〇

二四一、八五五、〇〇〇

昭和五三年度

一、六六〇、八一一、〇〇〇

二四五、三九七、〇〇〇

二一一、五二八、〇〇〇

合計

五、九六七、六二六、〇〇〇

一、〇五五、四八七、〇〇〇

九一四、三六一、〇〇〇

(単位円)

別紙 (六)

年度

時計バンド材料

工業材料

昭和四五年度

二一四、一五八、〇〇〇

一三二、六八九、〇〇〇

昭和四六年度

二〇四、一四四、〇〇〇

七八、七五三、〇〇〇

昭和四七年度

四一七、七七七、〇〇〇

八六、〇二〇、〇〇〇

昭和四八年度

四〇五、一二一、〇〇〇

一五九、三〇六、〇〇〇

昭和五四年度

一、二九一、四三五、〇〇〇

二六〇、八九八、〇〇〇

昭和五五年度

一、四四五、四七四、〇〇〇

四一八、九九二、〇〇〇

昭和五六年度

七八八、二九三、〇〇〇

二九四、八四〇、〇〇〇

(単位円)

別紙 (七)

年度

営業利益

昭和四四年度

三六、一〇二、九五〇

昭和四五年度

六五、三六九、一五一

昭和四六年度

四六、二七六、五三五

昭和四七年度

一一一、〇三二、五六六

昭和四八年度

一一六、一八四、九八七

昭和四九年度

一〇三、〇九五、七九一

昭和五〇年度

一〇八、四七〇、二〇一

昭和五一年度

二一四、六五一、五四三

昭和五二年度

二八九、七〇五、五六〇

昭和五三年度

二三五、八九〇、六〇五

昭和五四年度

▲四五三、一八二、八七八

昭和五五年度

一二〇、八八八、九六八

昭和五六年度

▲二七、三四〇、六二二

▲は損失(単位円)

別紙 (八)

被告従業員数

年度

44

39

14

53

45

44

11

55

46

46

11

57

47

50

10

60

48

47

10

57

49

48

13

61

50

48

13

61

51

51

15

66

52

60

15

75

53

80

15

95

54

70

11

81

55

60

9

69

56

58

7

65

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